*ブーバとキキ*

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 私が中学校に通っていたころの話だ。  二人で帰り道を歩いていたら、キキの友達が言った。 「あなたって、キキになりたいの?」 「な、なんでそう思うの」  おどおどしながら訊き返す。友達は言った。 「オレンジのものが好きだし、前髪も分けてるし。なんとなく、キキっぽいなって思って」 「違うよ」  自分の前髪に触れて、私は答えた。 「オレンジ色を選ぶのも、前髪を分けるのも、キキになりたいからじゃない。ただの私の好みだよ。……ブーバとかキキとか、意味わかんない。私は私だよ。それじゃだめなの?」  私の手をとり、友達は眉尻を下げた。 「悩んでるなら、ぼくに話してよ。親戚に医者をやってる人がいて、君みたいな子を診てるんだ」  私は友達の手を振りはらった。 「私は病気じゃない。変なこと言わないでよ」
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