2人が本棚に入れています
本棚に追加
私が中学校に通っていたころの話だ。
二人で帰り道を歩いていたら、キキの友達が言った。
「あなたって、キキになりたいの?」
「な、なんでそう思うの」
おどおどしながら訊き返す。友達は言った。
「オレンジのものが好きだし、前髪も分けてるし。なんとなく、キキっぽいなって思って」
「違うよ」
自分の前髪に触れて、私は答えた。
「オレンジ色を選ぶのも、前髪を分けるのも、キキになりたいからじゃない。ただの私の好みだよ。……ブーバとかキキとか、意味わかんない。私は私だよ。それじゃだめなの?」
私の手をとり、友達は眉尻を下げた。
「悩んでるなら、ぼくに話してよ。親戚に医者をやってる人がいて、君みたいな子を診てるんだ」
私は友達の手を振りはらった。
「私は病気じゃない。変なこと言わないでよ」
最初のコメントを投稿しよう!