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星の声
遠くで水鳥が飛び立つ音が聴こえた。
地球から10光年離れたこの星は、奇跡のような星だった。
約500年前、地球に住むことが難しくなった人類は、複数の方舟を地球から送り出したそうだ。幾多の方向に向けて出ていた人類たちの行く末を知っているものはいない。
方舟に乗った人類たちの多くは冷凍保存されていたそうだ。
この星についた、最初の人類はうまく蘇生できた。それは偶然によるものだったわけだから、遠くの植物が根を張ったように人類はこの星に生を育むことに成功した。
「あ、お月様がまた昇ってきた」
「ロルフ、今日の月は、サラナーダだね」
「うん、さっき沈んだのは、ミナだよね」
「そう、よくわかっているのね」
そう言われると、ロルフは母親の前でやけに照れていた。母子は空にあがった、大きな(それも空の10分の一を占めるほどの)月を見ながら、小高い丘の上で話をしていた。
母はハミングを奏でた。
「ね、お母さんのそのお歌。素敵だね」
「ええ、お母さんも好きなの。遠い昔の曲で、お祖母さんにもらった曲なのよ」
二つの影が丘の上で揺れていた。
空の色は透き通るような薄い青色で、この星での太陽が色を落としていた。
「なんていう曲なの?」
「『運試し』って言うみたい。私たちの祖先みたいね?」
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