晴天の霹靂  寿・現在(一)

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 高校卒業後、寿はニューヨークのデザイン大学に留学した。  国内での進学か海外に行くか、悩んでいた寿の背中を押したのは他の誰でもない粋だった。  でも、残念なことに寿にデザインの才能は全くないと、一年も経たずに気が付いた。認めたくなくて足掻いていた二年前、友人に頼まれ、校内のデザインコンペでモデルを務めた。  その会場で出会ったのが、小さなモデル事務所を開いている山崎芙季だった。  誘われるがまま、いろいろなオーディションを受けた。寿には、デザインの才能がない代わりにモデルの才能があった。寿は、あっという間にトップモデルに登り詰めた。  でも、モデルは性に合わなかった。  華やかな表舞台は似合わないと、自分でよく分かっているから、いつ辞めるべきか、辞めたらこの先の人生をどう歩むか、常に考えていた。  表舞台に立つよりも、裏方のほうが得意だった。
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