自分の中の思い  寿・現在(二十五)

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「茉由ちゃんありがとう。すっきりした。阿呆粋の話、聞いてくれる?」 「もちろん。結婚の(くだり)もね、聞くよ聞くよ」  寿は、三年間会わなかったことと、昨日の出来事を掻い摘まんで話した。茉由は、時折的確な質問を挟みながら、熱心に聞いてくれた。 「本当だ、『御坂粋、電撃移籍!』って書いてある」  茉由がネットで調べてくれた。 「怖くて自分ではネットを見られなくて。どこの国に行くの?」 「ベルギーだって。ちょっと待ってね、えっと……フランスの隣だ! あ、でも、四百キロ離れてる……」  ニューヨークより近いけれど、遠距離には変わらない。 「ありがとう茉由ちゃん。超遠距離から遠距離に変わるだけだね。今度はLINEも分かっているし、きっと大丈夫だと思う」  電話の向こうで、茉由が黙り込んだ。 「もしもし? どうした?」 「これから御坂さん来るんだっけ?」 「うん。何時になるんだか知らないけど、来てくれるはず」 「どうして、結婚なんて言い出したんだろう。だって、プロポーズもされていないんだよね? 何か考えでも……」  真剣に考えている様子の茉由に寿は吹き出した。 「ないない! あの人に策略とか戦略なんて単語は登録されていないから。思いつきだよ。昨日も何か、決定力とか突破力とかぶつぶつ言ってたんだよね。本当にさ、思いつきに振り回されるこっちの身にもなってほしいよ」 「うーん、そうかなあ……」  茉由はまだ何か考えているようだ。
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