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「寿ちゃんはどうしたいの?」
不意を突かれた。
自分がどうしたいなんて、考えたこともなかった。
「私? どうしたいって、もう、色々決まってるし……」
「私は寿ちゃんがどうしたいのかも大事だと思う。自分を騙し続けてると、破綻するよ」
寿は困惑した。どうしたいもなにも、この問題は二人だけの問題ではない。多くの人が関わり、尽力してくれている。寿のわがままが通るような段階ではない。
「寿ちゃんの立場も御坂さんの立場も分かるよ。でもね、ちゃんと自分と向き合って。行き着く先は同じでも、ただ流されて着くのと、抗いながらも自分の力で着くのでは、きっと意味も違ってくると思うから」
「そんなもんかな」
「そうだよ、よく向き合って考えて! 寿ちゃんはすぐに我慢して自分の思いを押さえ込むから」
茉由とは、近いうちに会う約束をして通話を切った。
天井を眺めて、茉由の言葉の意味を考えた。
自分の思いは昨日粋に話した。これ以上、何があるだろう。
粋が来たら、なんでわざわざあんなことを言ったのか問い詰めるだけだ。
粋とは一緒にいたいけど、結婚は嫌だと伝えようと思っていた。それと、三年会えなくても大丈夫だったから、しばらく会えなくても全然大丈夫だと、伝えよう。
粋は何て言うだろう。
目閉じて考えても、よく分からなかった。自分の中の思いも、全く見えてこなかった。
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