自分の中の思い  寿・現在(二十五)

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 微睡みそうになるのに眠れない。そんな時間を繰り返していたら、虫の羽音に似た音が部屋に繰り返し響いた。ベッドから起き上がり、スマホを取った。  発信者は粋だった。 「もしもし、粋?」 「うん。寝てた? さっき、中井さんに聞いた」  昼休憩だろうか。スピーカーの向こうはずいぶんと騒がしかった。 「今、昼飯なんだ。これ食べ終わったら行ってもいい? 夕方には、またこっちに戻らなくちゃいけないんだけど」 「うん。大丈夫だよ。あのさ、忙しかったら電話でも良いよ」 「絶対に嫌だ。絶対に行く。あ、お前、人の食うなよ! 里中!」  ガタガタと音がする。里中に何か食べられたのだろうか。寿は耳を澄ませた。 「もしもし? ごめん、うるさくて。里中の野郎、俺の唐揚げ食いやがった。マジで許さん! あ、ふざけんな! お前二個目はねえだろう! この野郎! 寿、切るね。一時間ぐらいで行くから。じゃあね」  待てこの野郎、という声を残して通話は切れた。  昨日もそうだった。彼らは、三年経っても、少しも成長していない。きっと広瀬は、クールに様子を見ているのだろう。高校の時から、全く変わっていない。 「変わっていない? 全く? 本当に?」  コンソールの上の炭酸水の栓を捻った。透明なグラスから、小さな泡の弾ける音が無数に流れる。  変わらないものなんてない。永久不変なんてあり得ない。
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