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粋は三年前と同じように寿を好きでいてくれた。もちろん、寿も粋が好きだ。
でも、好きの本質は変わっている気がする。
きっと粋も、今の好きと三年前の好きは違うはずだ。
里中も広瀬も与井も久保も、茉由だって、変わっているはずだ。
でもそれは後ろ向きな変化ではなくて、もっとポジティブなものだ。
各々に、悩みや迷いや挫折があって、砂利道を必死に走って、転んでそれでも立ち上がって乗り越えて、今に辿り着いているはずだ。
寿は自分の本当の気持ちが分かったような気がした。
粋は、分かってくれるだろうか。
寿の迷いと決断を受け入れてくれるだろうか。
結婚なんて重大な言葉をカメラの前で軽く吐くような阿呆だ。簡単には納得しないかもしれない。
でも、気持ちは決まっていた。
「顔洗って、メイクしよう」
寿は粋にLINEを入れた。
『モスバーガー買ってきて。マックじゃないよ、モスだよ』
日本に帰ったら、モスバーガーを食べたいとずっと思っていた。本当は控えなくちゃいけないけど、特別だ。
最後まできちんと話せるエネルギーをくれるような気がした。
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