御坂粋は阿呆で純粋です。二  寿・現在(二十六)

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「いつから広瀬先輩と住んでいるの?」 「去年から。広瀬の入団が決まってから住んでる」 「それまでは、一人暮らし?」  窓際から戻ってきた粋は、寿の向かいに座ると、買ってきた珈琲を啜った。 「寮にいた。本当は若手用なんだけど、俺があまりにも食生活に気を遣わなさすぎて、無理矢理入寮させてもらってた。今も、掃除とかはやるけど、飯は広瀬が作ってくれてる」  寿は、料理は得意だ。ニューヨークでも、ほぼ自炊だった。 「……海外に移籍するの?」 「うん。明日会見をする」 「昨日、教えてくれれば良かったのに」  珈琲を飲む粋の手が止まった。 「うん。迷ったけど、言わなかった。話しても結果は変わらないだろう」 「だったら何で、今朝のインタビューで結婚なんて言ったの」 「あれは、俺の夢。夢は口にしなくちゃ叶わないから」  朝と同じように素晴らしい笑顔だった。 「叶うかな?」  時々、不思議なくらい粋は鋭い。  まるで、この先の寿の言葉を知っているような顔で、真っ直ぐに見詰めてくる。 「叶わない。私の心配は、粋がベルギーで一人でやっていけるのかってことだよ。私はね、パリに行くの」 「知ってる。昨日、山崎さんに言われた」  まさか芙季が先手を打っていたとは思わなかった。その上での今朝の発言なのか。 「また、離れちゃうな」  粋の言葉に返事ができなかった。
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