御坂粋は阿呆で純粋です。二  寿・現在(二十六)

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 食べなくちゃ、最後まで話せない。残したら、途中で決心が崩れる。  ハンバーガーを口の中に押し込むと、三回噛んで粋の買ってきたオレンジジュースで飲み込んだ。  ポテトも頬張ると、同じように三回噛んでオレンジジュースで飲み込んだ。 「歯磨きしてくる」  夕方には帰ると言っていた。あと数時間、ちゃんと寿の思いを話さなければならない。  折れないように心を強く持って、最後まで話さないと。  鏡の中の自分に発破を掛けていると、粋がやって来た。 「さすがは高級ホテル! 風呂も綺麗だな。すげー、風呂からも外が見える。これって、盗撮とか大丈夫なのか?」  浴槽の目の前は窓だ。気になるならブラインドも下ろせるが、確か外からは見えないようになっているはずだった。 「裸の一つや二つ、見られても大丈夫だよ」 「マジか! 駄目だろう、見られたら」 「ショーのバックステージでは、パンツ一枚だよ、私」  粋の口が漫画のように口を開いた。黒目を小さくして、開いた口を右手で押さえた。 「戦場だもの。着替えに時間掛けられないし。粋がバックステージに来たら、卒倒するかもね」 「寿の裸を俺の知らない男が見てるってこと……?」 「その通り。わざとではないけど、手が胸に触れることもある。でも、いちいち気にしてられないぐらい、みんな真剣だしピリピリしてるよ」  かなりショックなようだ。確かに、寿も最初は驚いたし、恥ずかしいとも感じた。  でも、周りはショーを成功させるために、神経を集中し感覚を研ぎ澄まし、それぞれの仕事を熟している。見られたくないなど、言っている余裕はなかった。 「見たい? 私の裸」  粋が生唾を飲み込むのが分かった。
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