御坂粋は阿呆で純粋です。二  寿・現在(二十六)

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 粋はまだ寿の裸を見たことはない。それなのに他の男は見ている事実は、なかなか受け入れ難いだろうと思った。  ブラインドを下ろすと、ニットを脱いだ。スカートのジッパーを下ろし、下着姿になった。  粋の顔が真っ赤だ。 「一般的に男は女の裸を卑猥なものとして見るでしょう。でも、デザイナーたちは違うの。彼らにとって、私の裸は、デザインを具現化する道具なの。いかに自分の服を綺麗に見せてくれるか、それしか考えてない」  ブラジャーを取り払い、胸を隠していた腕を下げた。 「どう? 想像通り? それとも、期待外れ?」 「キレイデス」  粋の目は、胸の膨らみに釘付けになっていた。 「本当に? 粋の目から見て、バランスの良い体をしている?」 「イイトオモイマス」  棒立ちの粋を寿は抱き締めた。下腹に、硬いものが当たる。これは当然の反応なのだろう。 「粋に聞いてほしいことがあるの」 「ワカッタ。ワカッタカラ、フクヲキテ」  素肌の上にネグリジェタイプのナイトウェアを着た。  ボタンを全て架けたところで、粋が後から抱き締めてきた。 「今のは狡い。あんなことをされたら、冷静でいられない」 「私は真剣だよ。煽るために見せたんじゃない」  振り返ると、粋の瞳に薄らと涙が張っていた。目を潤ませて、困ったような怒ったような顔をしている。 「ごめん。やり過ぎたかも。向こうに行こう」  手を引くと大人しくついてきた。ベッドに腰掛けると、少し戸惑って、粋も隣に腰掛けた。  そういえば、告白された夜もこんな感じだった。懐かしくて、口元が緩んだ。 「何笑ってるんだよ」  自分が笑われたと思っているのか、ムッとして寿を見ていた。 「思い出したの。告白された夜もこんな感じだったなって」 「あの時は裸を見せられてない」 「そうじゃなくて、あの時もこうやってベッドに座って話したでしょう」  あれから、五年だ。  粋の手を握った。少し汗ばんでいた。
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