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粋はまだ寿の裸を見たことはない。それなのに他の男は見ている事実は、なかなか受け入れ難いだろうと思った。
ブラインドを下ろすと、ニットを脱いだ。スカートのジッパーを下ろし、下着姿になった。
粋の顔が真っ赤だ。
「一般的に男は女の裸を卑猥なものとして見るでしょう。でも、デザイナーたちは違うの。彼らにとって、私の裸は、デザインを具現化する道具なの。いかに自分の服を綺麗に見せてくれるか、それしか考えてない」
ブラジャーを取り払い、胸を隠していた腕を下げた。
「どう? 想像通り? それとも、期待外れ?」
「キレイデス」
粋の目は、胸の膨らみに釘付けになっていた。
「本当に? 粋の目から見て、バランスの良い体をしている?」
「イイトオモイマス」
棒立ちの粋を寿は抱き締めた。下腹に、硬いものが当たる。これは当然の反応なのだろう。
「粋に聞いてほしいことがあるの」
「ワカッタ。ワカッタカラ、フクヲキテ」
素肌の上にネグリジェタイプのナイトウェアを着た。
ボタンを全て架けたところで、粋が後から抱き締めてきた。
「今のは狡い。あんなことをされたら、冷静でいられない」
「私は真剣だよ。煽るために見せたんじゃない」
振り返ると、粋の瞳に薄らと涙が張っていた。目を潤ませて、困ったような怒ったような顔をしている。
「ごめん。やり過ぎたかも。向こうに行こう」
手を引くと大人しくついてきた。ベッドに腰掛けると、少し戸惑って、粋も隣に腰掛けた。
そういえば、告白された夜もこんな感じだった。懐かしくて、口元が緩んだ。
「何笑ってるんだよ」
自分が笑われたと思っているのか、ムッとして寿を見ていた。
「思い出したの。告白された夜もこんな感じだったなって」
「あの時は裸を見せられてない」
「そうじゃなくて、あの時もこうやってベッドに座って話したでしょう」
あれから、五年だ。
粋の手を握った。少し汗ばんでいた。
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