御坂粋は阿呆で純粋です。二  寿・現在(二十六)

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「……粋って童貞?」  粋の顔が固まった。粋は高校二年生の時に年上と付き合っていたと、誰かが言っていた。つまりは童貞ではないということだ。適当に返事すればいいのに、嘘が下手くそだ。 「一つ訊くけど、私と付き合うようになってから他の人としたりなんて」 「するわけがない! 前にしたのは寿が入部してくる前の話だ」  粋のくせに経験済みなのは生意気だ。昨日、寿の体に触れたように他の女の体に触れて、同じようにキスをしたのも許せない。  許せないけれど、それ以上に苛立った。 「でもさあ、三年間も会わなかったんだし、風俗とかは……」 「行ってない、絶対に行かない。……正直に言うと、キャバクラには連れて行かれた。でも、触ったりとかしてないし、それ以上は我慢した。抜ける店の入り口まで行ったけど、帰ってきた。誘惑に流されそうになったこともあったけど、ちゃんと堪えた!」 「流されそうになってるじゃん」  粋が来てから、ずっと苛立っている。  苛立ちの原因がどうしても分からなかった。 「でも流されなかった。逆に訊くけど、寿はどうなの? 本来だったらキスだって俺が初めてだろう? でも、それにしては昨日の夜慣れてたし。外人のイケメンに迫られたりして、起きたらベッドの中とかさ、あったんじゃないのか?」  寿は思い切り粋を睨んだ。粋はハッとした顔で目を逸らした。 「いや、信じてないわけではなくて、俺は寿をめちゃくちゃ信用してる。でも、そういうこともあったんじゃないかって……」  本当に馬鹿だ。言い過ぎたと後悔している。散々信用しているとか言っておきながら、これだ。  本当に阿保だ。阿呆すぎて悲しくなってくる。
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