1794人が本棚に入れています
本棚に追加
「……粋って童貞?」
粋の顔が固まった。粋は高校二年生の時に年上と付き合っていたと、誰かが言っていた。つまりは童貞ではないということだ。適当に返事すればいいのに、嘘が下手くそだ。
「一つ訊くけど、私と付き合うようになってから他の人としたりなんて」
「するわけがない! 前にしたのは寿が入部してくる前の話だ」
粋のくせに経験済みなのは生意気だ。昨日、寿の体に触れたように他の女の体に触れて、同じようにキスをしたのも許せない。
許せないけれど、それ以上に苛立った。
「でもさあ、三年間も会わなかったんだし、風俗とかは……」
「行ってない、絶対に行かない。……正直に言うと、キャバクラには連れて行かれた。でも、触ったりとかしてないし、それ以上は我慢した。抜ける店の入り口まで行ったけど、帰ってきた。誘惑に流されそうになったこともあったけど、ちゃんと堪えた!」
「流されそうになってるじゃん」
粋が来てから、ずっと苛立っている。
苛立ちの原因がどうしても分からなかった。
「でも流されなかった。逆に訊くけど、寿はどうなの? 本来だったらキスだって俺が初めてだろう? でも、それにしては昨日の夜慣れてたし。外人のイケメンに迫られたりして、起きたらベッドの中とかさ、あったんじゃないのか?」
寿は思い切り粋を睨んだ。粋はハッとした顔で目を逸らした。
「いや、信じてないわけではなくて、俺は寿をめちゃくちゃ信用してる。でも、そういうこともあったんじゃないかって……」
本当に馬鹿だ。言い過ぎたと後悔している。散々信用しているとか言っておきながら、これだ。
本当に阿保だ。阿呆すぎて悲しくなってくる。
最初のコメントを投稿しよう!