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「パリに……パリに行きたいの。もっと試したいの。どこまでできるか挑戦したいの」
「うん」
髪を撫でていた指が、寿の頬の涙を掬った。
「初めてモデルの寿を見たのは、美容室の雑誌だった。すごい胸がドキドキしたんだ。天職だって思った。めちゃ綺麗で格好良くて、さすが寿だって思った」
粋は優しい顔で寿を見ていた。
「俺は、いつも寿を応援してるよ。それで、パリに会いに行く。俺は大丈夫だよ。料理教室に通って、最低限の自炊はできるようにしてから行くから」
粋の瞳には、迷いも戸惑いもなかった。ただ真っ直ぐに煌めいていた。
「俺も海外でどこまで通用するか試したい。快諾してくれたユナイテッドにがっがりされないよう、良いプレーをしたいし、次のワールドカップにも日本代表として出たい。だから、頑張るよ」
粋の頬に頬を寄せた。少し、髭がチクチクした。
「私も会いに行く。会えるよね」
「会えるよ、大丈夫」
粋の唇が、寿の頬の涙を吸った。何度か触れて、唇が重なった。
「寿、好きだよ。大好きだ」
ゆっくりと、ベッドに倒された。
柔らかなマットレスが、寿を包み込む。
「いい?」
返事をする前に、唇を塞がれた。さっき掛けたボタンを器用に外していく。
断る理由はない。
互いの吐息を交換するように、甘い口づけを繰り返した。
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