御坂粋は阿呆で純粋です。二  寿・現在(二十六)

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「パリに……パリに行きたいの。もっと試したいの。どこまでできるか挑戦したいの」 「うん」  髪を撫でていた指が、寿の頬の涙を掬った。 「初めてモデルの寿を見たのは、美容室の雑誌だった。すごい胸がドキドキしたんだ。天職だって思った。めちゃ綺麗で格好良くて、さすが寿だって思った」  粋は優しい顔で寿を見ていた。 「俺は、いつも寿を応援してるよ。それで、パリに会いに行く。俺は大丈夫だよ。料理教室に通って、最低限の自炊はできるようにしてから行くから」  粋の瞳には、迷いも戸惑いもなかった。ただ真っ直ぐに煌めいていた。 「俺も海外でどこまで通用するか試したい。快諾してくれたユナイテッドにがっがりされないよう、良いプレーをしたいし、次のワールドカップにも日本代表として出たい。だから、頑張るよ」  粋の頬に頬を寄せた。少し、髭がチクチクした。 「私も会いに行く。会えるよね」 「会えるよ、大丈夫」  粋の唇が、寿の頬の涙を吸った。何度か触れて、唇が重なった。 「寿、好きだよ。大好きだ」  ゆっくりと、ベッドに倒された。  柔らかなマットレスが、寿を包み込む。 「いい?」  返事をする前に、唇を塞がれた。さっき掛けたボタンを器用に外していく。  断る理由はない。  互いの吐息を交換するように、甘い口づけを繰り返した。
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