御坂粋は阿呆で純粋です。二  寿・現在(二十六)

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 粋の指が止まった。  震える唇に優しいキスされて、粋に抱き締められた。 「大丈夫?」  大丈夫じゃない。鼓動が激しくて苦しいし、体に力が入らない。顔も熱かった。 「……粋の意地悪。駄目って言ったのに」  裸の粋が隣にいる。それだけで、もう何もいらないと思った。幸せだった。 「……やっぱり離れたくないな」  ポツリと粋が呟いた。 「私知ってるよ。そんなこと言っておいて、間際になれば、サッカーに打ち込みたいって言うんだよ」  粋は何も言わなかった。ただじっと寿を見ている。  それよりも、最後までしなくていいのか、心配だった。 「粋、もう終わりなの?」 「うん。今日は十分」  男の体がどういう仕組みなのか、保健体育の範囲でしか理解していないが、中途半端で終わっても大丈夫らしい。  寿の体は満足していたし、何より初めての感覚に力も入らなくて、これ以上はついていけそうになかった。 「疲れただろ。おととい、帰ってきたばかりだもんな」  言われてみればその通りだった。まだ、帰国して二日しか経っていなかった。 「時差ボケは? 大丈夫なのか?」 「昨日も今日もエキサイティングだったから、あんまり眠くないの。でも、こうしてたら寝ちゃいそう」  粋が地肌を掻くように、優しく髪を梳いた。人肌の心地良い温度と、粋が隣にいる安心感で、一気に眠気が襲ってきた。 「寝ても良いよ。オートロックだろ、ここ。ちゃんと確認して出て行くから」 「……帰らないで。まだいて……」 「まだいるよ」  視界がぼやけて、暗くなった。  粋が隣にいるだけで、こんなにも安らぎを感じるとは思わなかった。  帰らないで、できれば明日の朝もその先もずっと一緒にいてほしい。どうしたら叶うのか。考える前に深い眠りに落ちた。
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