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粋の指が止まった。
震える唇に優しいキスされて、粋に抱き締められた。
「大丈夫?」
大丈夫じゃない。鼓動が激しくて苦しいし、体に力が入らない。顔も熱かった。
「……粋の意地悪。駄目って言ったのに」
裸の粋が隣にいる。それだけで、もう何もいらないと思った。幸せだった。
「……やっぱり離れたくないな」
ポツリと粋が呟いた。
「私知ってるよ。そんなこと言っておいて、間際になれば、サッカーに打ち込みたいって言うんだよ」
粋は何も言わなかった。ただじっと寿を見ている。
それよりも、最後までしなくていいのか、心配だった。
「粋、もう終わりなの?」
「うん。今日は十分」
男の体がどういう仕組みなのか、保健体育の範囲でしか理解していないが、中途半端で終わっても大丈夫らしい。
寿の体は満足していたし、何より初めての感覚に力も入らなくて、これ以上はついていけそうになかった。
「疲れただろ。おととい、帰ってきたばかりだもんな」
言われてみればその通りだった。まだ、帰国して二日しか経っていなかった。
「時差ボケは? 大丈夫なのか?」
「昨日も今日もエキサイティングだったから、あんまり眠くないの。でも、こうしてたら寝ちゃいそう」
粋が地肌を掻くように、優しく髪を梳いた。人肌の心地良い温度と、粋が隣にいる安心感で、一気に眠気が襲ってきた。
「寝ても良いよ。オートロックだろ、ここ。ちゃんと確認して出て行くから」
「……帰らないで。まだいて……」
「まだいるよ」
視界がぼやけて、暗くなった。
粋が隣にいるだけで、こんなにも安らぎを感じるとは思わなかった。
帰らないで、できれば明日の朝もその先もずっと一緒にいてほしい。どうしたら叶うのか。考える前に深い眠りに落ちた。
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