離れる、離れない、離れたくないない  現在(二十六)

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 洗面所らしき方から水の流れる音が聞こえてきた。おとといは部屋の中を見る余裕がなかったと気付き、改めて部屋を見た。  三人掛けと二人掛けのソファが置いてあるのは、友達がよく遊びに来るからだろう。  部屋の色味は地味だ。ソファはグレー、カーテンはアイボリーだろうか。小さな観葉植物が二つ、窓際にあって、その横には粋のだろう、ダンベルが置いてあった。  シンプルなリビングだ。本棚にサッカー雑誌がたくさん並んでいるのは、サッカー選手らしい。 「綺麗だろ?」  千里眼の広瀬がにやりと笑った。 「ちゃんと片付いてて、驚きました。全部広瀬先輩ですか?」 「残念、御坂だ。俺は料理と洗濯。洗濯物を畳むのは御坂で、部屋の片付けや掃除も御坂だよ」  海でそんなことを言っていたのを思い出した。 「掃除はできるんだ……」 「あいつが壊滅的なのは、料理だよ。ああ、御坂。ケーキを芹沢が買ってきてくれたんだ。冷蔵庫にあるよ」  顔を輝かせて、粋がキッチンに入って行った。 「すげえ! 五個もあんじゃん!」 「お前の珈琲もあるぞ」  大きなトレイに、ケーキの箱・お皿・フォーク・自分の珈琲をいれたマグカップを置いて粋がやって来た。
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