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「寿は何にする?」
箱の中には五種類のケーキが並んでいた。
「何でもいいんだ。粋と広瀬先輩、お好きなのをどうぞ」
粋は広瀬をちらりと見た後、生クリームたっぷりのショートケーキを選んだ。広瀬はダークチョコレートを使ったガトーショコラを選んだ。付属のクリームは粋にあげていた。
残ったのは、紅茶のシフォンケーキと、チーズケーキ、フルーツタルトだ。
寿はシフォンケーキを選んだ。
「いただきます! うまい! マジうまい! 疲れた体に滲みる」
「お前は本当に生クリームが好きだな」
粋が、口の端にクリームを付けて満面の笑みを浮かべた。
「知ってるよ、生クリームマシマシ事件」
きょとんとした顔をして、寿を見た。
「謝ってるのに、川栗先輩のこと許してあげないんでしょう?」
「あれだよ、初めてハットトリックを決めた時のご褒美。クレープの生クリームマシマシ事件」
「ああ! あれはさ、川栗が酷いと思うんだ。だってそうだろう? 楽しみにしていた生クリームを半分も食っちゃうんだぜ」
必死に言い訳する粋を広瀬は笑いながら見ていた。
「粋が甘い物好きって、私は知らなかったよ」
紅茶シフォンを一口頬張った。オレンジピールとホワイトチョコに、アールグレイの茶葉が入っていた。口の中で解けて、程良い甘みが心地良かった。
「男が甘い物好きって格好悪いかなって思って……。寿、あんまり甘い物食べないだろ?」
言われてみればそうかもしれない。生クリームもチョコレートも大好きだが、粋のように熱烈なファンではない。
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