離れる、離れない、離れたくないない  現在(二十六)

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 綺麗に整った部屋だった。  ベッドの上の羽毛布団も、綺麗に皺を伸ばして掛けられていた。なぜか悔しくて、寝っ転がると、ぐしゃぐしゃにしてやった。  それだけでは足りなくて、ベッドに立ち上がり跳ねた。天井に頭をぶつけそうになって、跳ねるのは一度でやめた。  本棚を見ると、ここにもたくさんのサッカー雑誌があった。そのずっと横、端っこに隠すように卒業アルバムがあった。  葦沢高校の卒業アルバムを取りだした。  ケースにはところ狭しとメッセージが書かれている。男子女子問わずに書かれていて、後輩からのメッセージもたくさんあった。  粋の代の卒業アルバムを見るのは二度目だった。寿がまだ高校生の時、与井が持ってきた物を見せてもらった。粋のを見るのは初めてだった。  粋のクラスのページを開いて吹き出した。  わざわざ矢印を付けて、アホと書かれている。こういうのは与井の仕業だろう。  クラスページの粋は、どれもこれも真面目な顔をしていた。一枚も笑っている写真がない。  不思議に思いながら、サッカー部の集合写真を見た。  葦沢高校のユニフォームを着た粋は、皆と同じように笑顔で写っていた。  見返しには、ケースと同じようにたくさんのメッセージがあった。
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