離れる、離れない、離れたくないない  現在(二十六)

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『良かったら付き合ってください』  端っこにある、可愛らしい字で書かれたメッセージが目に入った。クラスと名前も書いてある。粋の隣のクラスの女子だ。  好奇心から、写真を確認した。寿も知っている人だった。  一年生の間でも小さくて可愛い先輩で有名だった。確かミス葦沢高校に選ばれた人だ。  きっと粋と並んだら、三十cmぐらいの身長差だろう。守ってあげたい感じが堪らないと、サッカー部の馬鹿共も話していた。  卒業式の時には寿と付き合い始めていた。ちゃんと断ったのだろうか。  この可愛い人は、粋がこんなに阿呆だと知らなかったのだろうか。知っていれば、外見に惑わされることもなかっただろう。  寿は粋が阿呆だと知っていた。その上で好きになったのだから、可愛い人とは好きのランクが違う。寿のほうが、断然上だ。  きっと今、寿はドヤ顔に違いない。別に構わなかった。鼻息荒くアルバムを閉じた。  次に、中学の卒業アルバムを見た。  これは、完全に初めてだ。  中学の卒業アルバムは、高校に比べるとメッセージの量が少なかった。  粋を見付けた。寿が初めて見た粋と同じ顔が、そこにはあった。  今よりも幼い顔立ちの粋の顔は強張って見えた。写真が苦手なのかもしれない。  高校の卒業アルバムの横に、中学の卒業アルバムを広げたまま置いた。
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