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幼い粋がどんな思いでこれを書いたのか。
心が削られるような痛みが体を巡った。悲しいなんて言葉では言い表せない。この感情をなんといえばいいのか、寿は知らなかった。
涙が溢れた。
代わってあげたいと、心から思った。
純粋な粋が傷付くのなら、自分が盾になりたいと思った。
もしもタイムマシーンがあるなら、これを書いている粋の元へ飛んで行って、幼い粋を抱き締めたかった。
あなたには、サッカーで繋がる一生の仲間ができるよ。私もいるよ。一人じゃないよ。そう教えてあげたかった。
今も、同じように生きづらさを感じているのだろうか。
人の気持ちが分からないなら、教えてあげたい。理解してくれるまで向き合いたい。
でも、これは違うと思った。
奢った考えだ。
寿は、粋を分かろうとしただろうか。理解しようと向き合っただろうか。
たぶん、していない。分からない粋を責めてばかりだったかもしれない。
寿は大きく深呼吸をした。
寿に振られると、海で泣いた粋のことだ。
振られるかもしれないと、きっと、リビングで戦々恐々としているだろう。
この先付き合っていけるのかはよく分からない。
でも、そばにいたいと思った。
零れる涙を拭いて、原稿用紙を小学校の卒業アルバムの上に置いた。
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