離れる、離れない、離れたくないない  現在(二十六)

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 ふと、窓際のサボテンが目に入った。  その横に見覚えのあるミサンガが置いてあった。  高校生の時に、寿が粋からもらったミサンガだ。足首に付けていたのが切れた時、粋が処分すると言って持って行ったのだ。  早く処分をしてねと言ったのに、まさか、まだこうやって取ってあるとは。  さっきの涙を返してほしい。  怒りと切なさが折混ざった何とも言えない思いを抱え、切れたミサンガを見詰めた。  まあでも、早く処分したほうがいい。キッチンで燃やそうと思い、立ち上がった。  今度は、この部屋では異質なものが目に入った。  何度か瞬きを繰り返し、見返した。  間違いない。見慣れたいくつかの雑誌の背表紙が、本棚に綺麗に並んでいた。  ずっとここにあった?  あまりにも目立つ場所なのに、部屋に入った時は気が付かなかった。  すごい量がある。  一冊出した。付箋が貼られている。そのページを開くと、数人の外国人の女性とともに着飾りメイクをした寿の写真があった。  もう一冊出して広げた。  その雑誌は日本では売られていない、全部英語の雑誌だ。初めて、寿が雑誌に掲載された時のものだった。  ここにあるファッション雑誌の全てに、寿が載っている。  なぜ粋がこれらを持っているのか。  粋は、こんなところにお金を使って何をしているのだろう。そんな思いとは裏腹に、また涙が零れた。  粋と話そう。  テーブルを退かすと、思い切りドアを開けた。
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