離れる、離れない、離れたくないない  現在(二十六)

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「すげー散らかしたな……」  確かに、結構散らかしていた。粋が呆気にとられているのが分かった。 「ちゃんと後で片付けるよ」  粋の長い指が、卒業アルバムの上の原稿用紙を抓んだ。 「これ、読んだんだ」 「勝手に読んでごめん」  粋が首を横に振った。寿をベッドに座らせ、自分は前にしゃがんだ。 「謝らなくていいよ。寿に隠すことなんて一つもないから。何を見ても何を読んでも構わない」  大きな手が寿の手を握った。 「言えなかったことが一つあった。聞いてくれる?」  返事の代わりに、寿はベッドを降りて、粋の前に正座をした。 「小学生の時、母さんに病院に連れて行かれた。診断結果は、アスペルガー症候群、今は自閉症スペクトラム症って言うらしいんどけど、それのグレーゾーンて言われた」  耳にしたことはあった。でも、寿にとって、身近ではない言葉だった。 「俺の場合は、他人の気持ちが分からない、空気を読めない、あとは、想像力の欠如とか、そんな感じで、完全に当てはまるわけではなくて、あくまでもグレーらしい。この診断は大人になっても変わらなかった」 「スマホで、調べてみていい?」  寿はスマホで、検索した。  出てくる症状は、当てはまるものもあれば、全く当てはまらないように思えるものもあった。だから、グレーゾーンなのだろう。
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