離れる、離れない、離れたくないない  現在(二十六)

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「私が辛かったことを全部言うから。よく聞いて。高校生の時は、サッカーばかりでろくに会えなかったのが辛かった」  叩かれた頬を押さえて、黒目を小さくして、粋が寿を見ていた。 「私が留学するっていうのに、しばらくはサッカーに打ち込みたいって、何であのタイミングで言うわけ? 二年間、私は粋のお荷物だったってこと? それで、留学したら連絡できなくなって。辛かったけど、粋も頑張ってるからって、踏ん張ってたら……」 「いや、だから、それは海でも話した……」 「うるさい! 黙って聞け」  粋の黒目がもっと小さくなった。  本当に言いたいことはこれじゃないのに、感情がマグマのように溢れ出して、止める術もなかった。 「山森梓と熱愛だなんて、ネットで騒がれて。その上、あの雑誌は何?」 「あれは仕事だって……」 「あれを見て、私が褒めるとでも思ったの? 本当に阿呆だよ。めちゃくちゃ嫉妬してるのに、褒めるわけないでしょう!」  時が止まったように、静寂が二人を包んだ。 「……嫉妬?」 「悪い? そうだよ、嫉妬だよ。格好悪いけど、嫉妬してるんだよ。どうして、私以外の女の体を触るの? なんで私以外の女に体を触らせるの?」  寿は立ち上がると、リビングから『Lazy』を持ってきた。 「こんなにセクシーな粋も、粋のこんなにセクシーな表情も、初めて見た! それに、これ!」  山森梓が下着越しに粋の股間に触れ、口を寄せようとしているページを広げた。 「この女、粋の、粋の、粋の……私だって実物は見たことないし、昨日、初めてジーンズ越しに触っただけなのに。なのにこの女は下着越しに触ってて、こんなの有り得ないし、絶対に許せない!」  寿はそのページを引き千切ると、ビリビリに破いた。粋が山森梓の胸を抱き締めるページも、全部破いた。
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