離れる、離れない、離れたくないない  現在(二十六)

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 粋はすごく怖い顔をしていた。  謝りはしたが、雑誌を破った行為に後悔はしていない。思いの丈は全て吐き出した。  これで伝わらないなら、本当にもう駄目なのだろう。  怖い顔をしたまま、目の前でしゃがみ、粋は片膝を付いた。 「ねえ粋」  眉根を寄せた顔も格好いい。目がいいのだろう。少し吊り上がった大きな目は、伏し目にすると長い睫毛が際立つ。鼻筋も綺麗に通っているし、唇のボリュームもちょうどいい。  何より骨格がいい。首筋がすごくセクシーだし、肩の線とか胴回りも綺麗だ。 「私の存在は粋を苦しめるかもしれない。これからもきっと、私は、粋から自由を奪うよ」  自分以外の女に触れるななんて、とんだ束縛発言だ。でも、本心だ。絶対に触ってほしくない。だから、この気持ちを受け入れてもらえないなら、振られるのも仕方がないと、冷静になった頭の片隅で考えた。  これが最後になるかもしれない。そんな予感があった。 「……俺の首に掴まって」  上半身を倒してきた粋に突然抱き締められた。意味も分からず、言われたとおりに首に腕を回すと、そのまま抱き上げられた。  生まれて初めてのお姫様抱っこだった。 「やだ、粋! 何?」 「シャワー浴びる?」  シャワー? なぜシャワーなのか、粋の行動に思考がついていかない。どちらかといえば、お腹が空いていた。 「使い方は分かるよね? 着替え、出しておくから」  抱えられたまま洗面所に連れて行かれた。床に立たされると、ドアを閉められた。
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