離れる、離れない、離れたくないない  現在(二十六)

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 シャワーを浴びるしかないようだ。  別れの前の禊ぎのつもりなのだろうか?  全く理解できない。綺麗に磨かれた洗面台の鏡に映る自分を見た。酷い顔だ。メイクは崩れまくっている。  本当なら、いつも使っている基礎化粧品を使って肌を整えたいところだが、何も持ち合わせていなかった。こうなると分かっていたら、高島屋でひと揃い購入してきたのにと、とても悔やまれた。  日本に帰ってきてから、何一つメンテナンスできていない。  ボディメイクも怠っているし、肌なんて最低限しかできていない。エステにも行けていない。こんなんで、良く今日の仕事ができたと思う。  中途半端にメイクを落としても、化粧水もクリームもない。とりあえず、メイクは落とさずにシャワーを浴びることにした。  お風呂場も綺麗に掃除されていた。  シャンプーとリンスは、よくドラッグストアで見掛けるものが揃えてある。髪を洗うか迷ったが、洗うことにした。 「寿、顔を洗うやつ買ってきたから置いておくよ」  突然、声を掛けられて、思わず胸を隠した。粋は何かを浴室のドアの傍に置くと、すぐに出て行った。ドアの外には、コンビニによく売っているお泊まりセットの洗顔用品が置かれていた。  本当に意味が分からない。でも、雰囲気に流されて髪まで洗っている自分も大概だ。
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