離れる、離れない、離れたくないない  現在(二十六)

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「ちょっと、粋」  ドアを少し開けて声を掛けると、粋が飛んできた。 「下に履く短パンとかトレパンでもいいけど、ない? 丈が短いんだけど、これ」 「開けてよ、見ないと分かんない」  照れても仕方ない。ドアを開けた。 「うわあ……ガチでやばい。マジで脚長えな。すげえ綺麗」  粋は、洗面台に連れてきた時と同じように寿を抱き上げた。 「ちょっと、パンツ見えちゃう。重いからいいよ、下ろして」 「重くないよ。化粧水とかは付けた? まだなの? 髪も乾かしてないじゃん。待ってて」  ベッドに寿を下ろすと、バタバタと部屋を出て行った。すぐに、ドライヤーと買ってきてくれた洗顔用品の袋を持って戻ってきた。 「ほら、これ付けて。髪は俺が乾かす。大丈夫だよ、わりと上手いと思う。家では納豆がお風呂入ったら乾かすのは俺の役目だったし」  納豆は粋の実家で飼っている柴犬の名前だ。  納豆と同じ扱いかと思ったが、大人しくしたがった。確かに、なかなか上手かった。指の当たりが優しくて気持ちがいい。  どういうつもりなのか訊きたかったが、どういうつもりもそういうつもりもなかったら恥を掻くだけだからやめた。 「じゃあ、俺、シャワー浴びてくるね」  懐っこい笑顔を見せる粋の真意が分からないまま、寿はベッドに寝転がった。
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