離れる、離れない、離れたくないない  現在(二十六)

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 卒業アルバムは片付けられていた。寿が散らかした雑誌も綺麗に本棚にしまわれている。  伸ばした脚がスースーする。引き出しを無断で開けるのには気が引けた。寿は顎先まで羽毛布団に入った。  普通のベッドよりもサイズが大きい。羽毛布団も大きいようで、足先もはみ出なかった。  枕も布団も粋の匂いがした。  寿とは違う匂いだ。何の匂いに近いだろう、目を閉じて胸の奥まで吸い込んだ。樹の皮のような、月桂樹の葉のような、落ち着くとてもいい香りだ。  目を閉じていると、粋に抱き締められているような感覚に陥ってきた。ブラジャーをしなかったのも、悪かった。素肌に擦れるTシャツまでもが、粋の体のように思えてきて、体が熱くなる。  Tシャツの上から自分の胸に触れてみた。昨日、粋が触れた時のように、ビリビリしたような感覚は起きなかった。  粋が触れたように、ショーツの上から指を当ててみた。なんとなく感じるけれど、大きな快楽の波は全くなかった。  それよりも、濡れてしまったのが気になった。触れられる前から濡れていたら、寿もやる気満々みたいだ。  ティッシュで拭く? 拭いたティッシュは、くずかごに捨ててもいいものか。トイレに拭きに行ったとして、それを粋が知ったら、触れてもらえないんじゃないか。トイレに拭きに行って、もう一度シャワーを浴びる?  こうなってしまった時、世の女の子たちはどうしているのだろう。  足を動かすと、水音が聞こえるような気がして恥ずかしい。迷っているうちに、粋が戻ってきた。
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