離れる、離れない、離れたくないない  現在(二十六)

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「もう、女が関わる仕事はしない。約束する。寿を傷付けるつもりはなかったんだ。本当にごめんなさい」 「いや、それは違うよ。お仕事に関わる人々に性別は関係ないでしょう。粋がしてはいけないのは、ああいうセクシャルなことだよ」  また首を傾げている。 「分かる?」 「……例えば、テレビとか雑誌で、タレントやファンの人とのデート企画みたいなのもよくないってことだよね?」 「そうだよ。分かってんじゃん」  デート企画ぐらいなら許すべきなのかもしれない。でも、本音はそれすら嫌なのだ。すごい独占欲だと、自分でも呆れた。 「さっきさ、寿は俺に何が辛かったか教えてくれたろう。だから、俺も何が辛いのかちゃんと伝えるよ」  粋が辛いと思うこと。いったい何だろうか。 「待って、当てる。怪我や故障でサッカーができなくなること?」 「うーん、それは三番目ぐらい」  サッカーができないよりも辛いことが二つもあるのか。寿は考えた。一つ、希望を言ってみることにした。 「私に会えないこととか?」 「それは二番目」  サッカーよりも上だった。とても嬉しかった。 「俺が一番辛いのは、寿が俯かせることと泣かせることだよ。寿が前を向いて笑っていられるのなら、サッカーができなくなっても構わないって思う。それぐらい辛い」 「嘘だ。嘘だよ、そんなの。だって、サッカーは裏切らないんでしょう。でも、私は裏切るかもしれないよ」  少し考えて、粋が微笑んだ。  やる気満々で裸のくせに、穏やかで落ち着いた優しい笑みだった。
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