離れる、離れない、離れたくないない  現在(二十六)

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 振り返った粋の腰に、目は釘付けになった。  そこだけ作り物みたいだった。それなのにリアルで、ちょっとグロテスクで、思っていたよりも大きかった。昔の人は松茸で表現していたけれど、なるほど、的を得ている。  弟たちのおむつを替えたりしたが、あれとは全然違った。 「すごい……なんか、痛そう。触ってもいい?」  指先で恐る恐る触れた。そっとなぞると、粋の体が微かに動いた。 「痛い?」  粋の瞳が、さっきにも増して熱を帯びた。なんだか苦しそうだ。 「痛くない。……触るの、嫌じゃないの?」 「うん。粋のだから。もっと触ってみても大丈夫?」  恐る恐る触ろうとする寿の手に、粋の手が重なった。そのままそれを握ると、無言で上下に手を動かした。  粋の呼吸が荒くなった。 「気持ちいい?」  眉間に皺を寄せた粋は、返事もせずに寿に覆い被さってきた。 「駄目だ、挿れたい。挿れていい?」  また指が入った。さっきよりも乱暴なのは、粋の焦燥の表れなのかもしれない。少しだけ痛かった。  粋が棚に置いてあった箱に手を伸ばした。チョコレートか何かかと思っていたが、コンドームの箱だったみたいだ。ケースから出して器用に装着する様は、慣れたようにも見えた。  寿のそこに粋のものがあてがわれた。ヌルヌルと中に入ってくる感触がした。  粋の表情に全く余裕はなかった。でも、余裕がないのは寿も同じだ。  心臓はゴンゴンとうるさいし、体は熱くて仕方がない。さっきまで支配されていた甘美な快楽は、今はどこにもなかった。  少しずつ粋が入ってくる。裂けそうな痛みに耐えていたら、粋の汗が胸に落ちてきた。目を固く閉じていたと気付いて、瞼を上げた。  心配そうな粋の顔が上から覗いていた。  「痛そうだ。やめようか?」 「いや。やめないで。ちゃんと最後までして」  腕を伸ばして、粋を引き寄せた。
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