離れる、離れない、離れたくないない  現在(二十六)

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 喉が渇いて目が覚めた。真っ暗闇の中で眠っていた。  一瞬、自分が今どこにいるのか分からなかった。  頭を動かしたら、逞しい腕がのし掛かってきた。 「……起きた?」  掠れた声が耳元でした。そうだ、ここは粋の部屋だ。  真っ暗でよく分からない。腕を動かすと、粋の体に触れた。二人とも、裸のまま眠っていたらしい。  粋が、もぞもぞと動いた。しばらくして、フルムーンのライトが点灯した。  抱き締められて、粋の胸に頬を寄せた。  今は何時だろうか。粋は、明日は練習はないのだろうか。 「粋、明日は練習は?」 「あるよ。寿は? 仕事?」 「うん。次のショーの打ち合わせがある」  粋の顎に、黒い髭が顔を出していた。指で触れると、思ったよりも毛質は硬くてチクチクした。 「粋も髭が生えるんだね」 「ん? うん、実は結構生えてくる」  高校生の頃は髭なんて少しもなかったような気がする。指先で顎を撫でていたら、不意にキスをされた。 「……寿、腹が減ってない? 俺さ、寿が寝ている間に、カップラーメン食べたんだ」  カップラーメンと聞いて、腹が鳴った。体は、正直だ。 「なんか食べる? と言っても、俺、カップラーメンぐらいしか作れないけど……。あ、りんごがあった! りんごを剥こうか? それならできる」  粋の剥いたりんごを食べるために、温かいベッドから起き上がった。落ちていたショーツを身に着け、今度はちゃんとスウェットの上下を借りた。ウエストと肩は合わないが、着丈はちょうど良かった。
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