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「Lazy、見てくれたの? 嬉しい!」
無邪気な人のようだ。悪気があるのかないのかよく分からない。もしかしたら、性質的に粋に近いかもしれない。
「梓さん、ビールでいい?」
「うん、ありがとう粋くん」
粋はビールを飲むようだ。店員に生ビールを二つ頼んだ粋は、寿の前に座った。目が合った。
「寿は何を頼んだの?」
皆の前にある中ジョッキとは違う寿のグラスを覗き込んだ。
「これは……」
「梅酒ソーダだよ。芹沢があまり強くない酒がいいっていうから俺が頼んでやったんだ!」
たぶん、与井は粋が梓を連れてきたことを良く思っていないみたいだった。右腕を後に回し、寿の肩を抱くと思いきりあかんべーをした。
「与井、寿に触るな!」
「うるせえ、阿呆御坂」
与井が寿を抱き締めた。粋の顔が険しくなる。広瀬も里中も尾崎も久保も永倉も山原も別の話をしていて、林だけがハラハラした顔でこちらを見ていた。
「ふふっ、本当に皆さん仲良しなのね」
軽やかな笑い声を上げたのは、梓だった。
「与井さんよね、よく粋くんからお名前を聞いていてお会いしたいと思っていたの」
少し首を傾げて、梓は懐っこそうに笑った。柔らかな笑顔に、与井の顔が惚けたようになった。
「御坂、俺らの悪口ばっかり言ってるんじゃないんですか?」
「とても大切なお友達だって言ってるわよ。こんなに素敵な仲間がたくさんいて、粋くんは幸せね」
粋は仲間の話を梓にしているらしい。普通、仕事仲間に自分のプライベートの話なんてするものだろうか。それとも、二人は寿が思っているよりも親しいのかもしれない。
心が重くなった。すごく苦しい。
粋が梓と浮気をしているとは思っていない。でも、他の女の口から粋の話を聞くのは、気分が悪かった。
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