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与井が片眉を上げて粋を見ていた。
「お前、モテてる自覚あんだろう。何、首を傾げてんだよ」
「だってさ、俺には寿がいるって皆知ってるわけだろ。それなのに、どうして俺のとこに来るの? 万に一つも可能性なんてないんだから、別の男のとこにいけばいいだろう」
眉間に深く皺を寄せて、今度は反対側に首を傾げた。
「先生って旦那さんがいるんだよな? よく分からん、全く理解できねえ」
粋はスマホを出すと何やら操作をした。電話を架けているようだった。
「ああもしもし、御坂です。すみません夜分遅くに。教室なんですが、スケジュール的に通うのが難しくなってきたので今日で最後にしてください。急に申し訳ありません。よろしくお願いします」
一方的に話しているように見えた。通話を切ると、そのまま電源も切った。
「たった今、料理教室は辞めた。せっかく紹介してもらったのにすみません」
粋が、唖然としている梓に頭を下げた。
「え、辞めたって……、ちょっと急過ぎない?」
「先生には、一週間ぐらいしか通えないかもと話してあったから、大丈夫だと思う。でも……」
粋はまだ首を傾げていた。
「与井は彼女がいるのに他の女にベタベタされたら嫌じゃないのか? 普通の男は、好きな人がいても誘惑されたら、簡単に靡くものなのか?」
「ええ! 俺か? えっと、おい、山原! お前はどうなんだ」
「俺っすか? 俺は、特定の彼女は作らないっす。まだ遊んでいたいんで。御坂先輩に寄ってくる女も、好きとか付き合いたいっていうよりも、後腐れなく遊びたいんじゃないすかね。ね、広瀬先輩」
広瀬は、興味深そうに皆の話を聞いていた。
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