公開裁判 寿・現在

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「色々あるんだけど、一番ムカついたのは、山森梓を連れて来たこと」  やっぱり粋は理解していない。瞬きをして、首を傾げた。 「粋は何で? って思ってるよね。あの人の、私のファンって嘘だと思う。本当は宣戦布告のつもりだったと思うの」 「あ、俺もそれ思った」  尾崎が手を挙げた。寿以外にもそう考えた人がいた。よくよく見れば、皆頷いている。粋以外は皆そう思っていたのだ。 「何の宣戦布告か分かる?」 「全然分かんねえ」 「粋を奪うよっていう宣戦布告」  粋の黒目がものすごく小さくなった。限界まで上がった眉毛は、すぐに険しくなり、眉間に皺を寄せた。 「俺を奪う意味が分かんねえ。だって、友達じゃん。俺はあの人に何の恋愛感情もないのに、どうやって奪われるんだ?」 「友達だと思ってるのはお前だけだ。あの人、ちょいちょい芹沢にマウント取ってたぞ」  広瀬も気付いていたようだ。なんとなく嫌な気分だったのは、気のせいではなかった。理解してくれる人がいて、少し気持ちが軽くなった。 「いつも一緒に通ってたのか、料理教室」 「いや、今日と、あと一回だけ一緒になったぐらいかな」 「本当か? めちゃくちゃ親しそうな口振りだったろう。俺らの話をいつも聞かされてるみたいに言ってたし」 「今日、来る前にどんな人の集まりなの? って聞かれて、お前らの話を初めてした」  しばらく首を傾げて、粋が大きな声を上げた。 「そうか! 分かった! 俺がよく与井たちの話をしてるみたいに梓さんが言ったとき、何言ってんだろうと思ったんだけど、そうか、そういうことなのか」
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