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「俺に言わせれば、こんなの五十点だ、五十点。うまく断ってるところだけ点数をやるけど、他は全然駄目だな。俺なら、きっぱりと恋人がいるので無理ですと送る!」
与井がふんぞり返った。
「そこだよ、御坂。概ね、この内容でいいと思うけど、もっとはっきり書かないと駄目だ。気のない女には、微塵の期待も持たせたら駄目だ。おい広瀬、他にはないのか?」
尾崎が広瀬を促した。皆、かなり酔っているように見える。完全に楽しんでいた。
「ああ……これも駄目だな。読み上げるぞ、まずは女からのだ。御坂さん、こんばんは。ここでハートマークだ。先日の教室では助けていただいてありがとうございました。すごく男らしくてドキドキしました。今度お礼をしたいので、お食事に一緒に行きませんか?」
狭い座敷の中がざわついた。
寿の心もざわついた。普通、女子というのはこんなに積極的なのだろうか。とてもではないが、こんなに明け透けなメッセージを寿は送れない。
「お前、ドキドキってなにやったんだよ!」
「それ、先生だろう? 吊り戸棚の上に入っていた大鍋を出しただけだよ。送られてきた時はよく意味が分からなかったけど、そうか……」
粋は難しい表情をして黙り込んだ。
「御坂の返信は?」
「あれぐらいお安いご用です。僕でできることがあればお手伝いしますので、どうぞ頼ってください」
「駄目だ駄目だ! 零点! マイナス百点だ!」
与井が今度は粋にチョーク・スリーパーを掛けた。
「いってぇ! やめろ、与井! マジで痛い!」
粋の顔が苦しそうに歪んだ。
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