公開裁判 寿・現在

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「でも、撮影は決行された。その雑誌が発売された後、モデルの男が御坂のファンだからと、芹沢が飲み会に連れて来た。お前に会っていない間、芹沢とその男は頻繁に連絡を取っていたらしいことも発覚した。どうだ、御坂。腹が立つだろう。嫌だよな?」  広瀬は凄い。  何が凄いって、粋の扱いを心得ている。  今の話は、粋の心を強く揺さぶったようだ。粋の表情には、驚きと戸惑いと、後悔みたいな色が浮かんでいた。 「料理教室の女性たちに律儀に返信したのは何故だ」 「無視したら悪いかなぁと思って……」  静かだった与井が、粋にまたチョーク・スリーパーを掛けた。 「お前は阿呆だ! バカだ! 何で料理教室の女どもに気を遣う。お前が一番に考えなくてはいけないのは芹沢だろう」 「待て、苦しい!」 「俺はやめないぞ! お前は阿呆だ。山原みたいに悪知恵を働かせて隠そうともしないから、もっと悪い。広瀬の話を聞いて、芹沢がどんな思いでいたか分かったろう」  粋は本当に苦しそうだった。寿が与井を見ると、与井は腕を解いた。 「……大丈夫?」 「うん……。帰ろうか、送って行くよ」  え、帰る? 突然の帰宅宣言に寿は困惑した。 「帰るのか?」  広瀬も驚いたようだ。眉を上げて粋を見た。 「うん、送ってくる。それで、ちゃんと謝るよ。広瀬も皆もありがとう。どれだけ寿を傷付けていたか、よく分かった。謝ったところで許してもらえないかもしれないけど、謝る」  ずいぶんと殊勝な態度で、粋は後輩含めた面々に頭を下げた。 「いや、待て。それは駄目だ。まだ判決が出てないだろう」  粋の黒目がまた小さくなった。驚いたり信じられないことがあると、粋の黒目はすぐに小さくなる。
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