勇猛無比な女の子  粋・過去(一)

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勇猛無比な女の子  粋・過去(一)

 一年のマネージャーが入ってくる。しかも、かなりの美人らしい。そんな噂がサッカー部に流れたのは、インターハイに初戦敗退し悔しい思いをした、夏休み明けだった。  昼休みに監督に呼ばれて職員室に行くと、背が高く髪が長い女子がいた。 「御坂、入部希望者、マネージャーだ」  粋は目の前の女子を見た。  とても背が高い。  粋の身長が181cmだから、たぶん170cmは越えているはずだ。 「芹沢寿です。よろしくお願いします」  女子は苦手だった。差し入れの食べ物は好きだが、媚びた目つきややたら艶々した唇は恐怖でしかなかった。  目の前の寿は、唇は艶々しているが、媚びた目つきではなかった。どちらかといえば、挑戦的だ。 「キャプテンの御坂です。じゃあ、放課後、グラウンドまで来てくれる? 場所は分かる?」  寿の強い瞳は、それぐらい分かるに決まっているだろうと言っているようで、粋は思わず後退った。 「では、今日からよろしくお願いします。失礼します」  結局寿は、粋の問いかけには答えずに職員室から出て行った。
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