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粋と広瀬の住むマンションは、前回同様に綺麗に片付いていた。
「エアコンを付けたから、すぐに暖かくなると思う。洗面所で手を洗っておいで」
「粋は洗わないの?」
「俺はキッチンで洗うよ」
粋は酔っていないのだろうか。
泣きながら歩き続けたからか、すごくふわふわするし、泣いてスッキリしたからか、楽しくて仕方がなかった。
「嫌だ。粋と洗う」
キッチンで手を洗う粋を後ろから抱き締めた。
「どうしたの? 怒ってるんじゃないの?」
酷く驚いた様子で粋が振り返った。
酔うと好きな人がこんなに格好良く見えるものなのか。アルコールのフィルターでいつもの何倍も格好良く見えた。普通にしてても格好良いのだから、目の前に今いる粋はマニア垂涎ものだった。
「粋は格好良いねぇ」
振り返った粋は目を白黒させていた。
「とりあえず、手を洗ってうがいしないと駄目だよ」
粋に言われ、寿は手を洗ってうがいをした。
手を拭くと、また粋に抱きついた。目の前に粋の唇がある。少し背伸びをして、粋にキスをした。
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