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「酔ってるの? ホットワイン作ろうかと思ったけど、珈琲を淹れるからソファに座ってな」
「ホットワイン! そんなお洒落な飲物、粋が作れるの?」
「うん。広瀬に教えてもらったよ」
「それ飲みたい。大丈夫、酔ってないから作って」
粋はしょうがないなぁという顔で笑うと、冷蔵庫から赤ワインとビニール袋を出した。小鍋にワインを入れて、ビニール袋に入ったスパイスを鍋に入れた。
「シナモンとクローブと、へえ、八角まで入れるの?」
「よく知ってるね。実は、スパイスを広瀬が小分けにしてくれてるんだ。沸騰する前に火を止めれば完成だって言ってた」
赤ワインとスパイスが合わさった香りがとてもいい。
「フランスだとヴァンショー、ドイツだとグリューワインって言うよね。いい香り。ニューヨークでも、寒い日は作ったりしたよ。いつもは沸騰させてしっかりアルコールを飛ばしてから飲んでたんだけど、今日はアルーコール有りで飲む」
「大丈夫? 気持ち悪くなったりしないか?」
何倍も格好良さを増した粋が、顔を覗き込んできた。
本当に格好良い。いつまででも見ていられる。そういえば、どうしてさっき泣いたのか、考えてみたが思い出せなかった。
「うふふ。ソファで待ってるね」
粋の頬にキスをして、寿はキッチンを出た。
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