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ソファに腰を下ろしたが、座っていられなくて横に倒れた。
さっきはふわふわしていたが、今はぐるぐるしている。目を閉じると余計にぐるぐるするから、天井から下がる白木のシェードのライトを見ていた。
粋がベルギーに行ったら、この部屋はどうなるのだろう。広瀬一人で住むには広すぎる。
天井を見上げる視界に、粋の顔が現れた。
「できたよ。やっぱり酔っ払ってるじゃん。水を持ってくるよ」
スパイスと熱せられた赤ワインのいい香りが漂った。
起き上がって待っていると、ミネラルウォーターのペットボトルを粋が持ってきた。蓋を緩めて差し出されたペットボトルの水を口に含んで、喉が渇いていたと気が付いた。
「お水美味しい」
三分の一ぐらい飲んで蓋を閉めた。
「口の端から水が零れてるよ」
拭う前に、粋の唇が触れて零れていた水を吸った。そのまま、優しくキスをされた。
「寿は酒が弱いんだな」
「粋は私よりもずっと飲んでいたけど、あんまり酔ってないね」
「うん。俺、酒強いんだ。全然まだ飲める」
寿はホットワインのカップを手にした。二重ガラスの耐熱性のカップの中、シナモンスティックの浮かぶ薔薇色の液体が煌めいていた。
「オレンジが入ってるよ」
「広瀬が入れると美味しいって、買ってきたんだ」
ホットワインを一口飲んだ。アルコールの匂いはしなかった。
「美味しい。葡萄ジュースみたい」
「……結構酔ってるみたいだったから、アルコール飛ばしてきた。あんまり飲み過ぎるなよ」
粋が眉を顰めた。きっと、「あんまり飲み過ぎるなよ」には、「俺のいない時は」がくっ付くのだろう。
不意に、さっき泣いていた理由を思い出した。
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