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「あのさ、私ね、私の知らないところで女の人とLINEのやり取りしてるのも嫌だ」
「しないよ。もう、絶対にしない」
「私の知らない女の人に、粋が優しくして男らしいとか思われるのも嫌だ」
「大丈夫だよ、優しくしないから」
「ベルギーの女の子はもっと積極的かもしれない。顔立ちだって違うし、知らない土地で可愛い子に優しくされたら、粋だってぐらぐらしちゃうかも知れないよ」
「大丈夫、もう寿以外の女には近寄らないから」
言っていて情けなくなってきた。
心配と不安をぶつけて、束縛ばかりだ。
自分を信用できない恋人で、粋は息苦しくないのだろうか。
自分だったら、こんな彼女は嫌だと思ったら、また悲しくなってきた。
「……もう嫌だ」
涙が溢れる。心の中はいろんな感情が交じってグチャグチャだし、頭はぐるぐる回っていた。
「ごめん、本当にごめんね。もう心配掛けたり不安にさせたりしないから、約束するよ」
慌てた粋が指で何度も涙を掬った。
謝らせたいわけではない。ただ、安心と平静と、揺るぎない自信が欲しかった。
「……粋はさ、不安にならないの? 心配にならないの?」
「不安だけど、心配はしてないよ」
「何で?」
「分かんない。分かんねえけど、好きだからかな。あ、辛い思いしていないかなとか、苦しくて泣いていたりしないかなって、それは心配になる」
また涙が溢れてきた。
「粋」
返事の代わりに粋が少し首を傾けた。
「粋は、本当に私でいいの?」
「寿がいい。寿が好きだよ」
「……私、モデルを辞めようかな。そうしたら、粋とずっと一緒にいれる」
「駄目だよ、それは絶対に駄目だ」
珍しく、粋の顔が険しくなった。
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