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初恋の人 (寿・現在)
頭が痛かった。
トンカチで殴られたとか、そういう物理的な痛みとは違う。大晦日、頭を鐘の内側にに入れて、外から突かれたらこんな感じかもしれないと思った。
頭が痛いのに、普段は触れない部分に空気の流れを感じて落ち着かない感じがした。足を動かしたら、固いものに当たった。
重たい瞼をこじ開けて、驚いた。
隣で、裸の粋が寝ていた。
寿自身も裸だった。ショーツすら穿いていない。
記憶の糸を手繰り寄せようにも、頭が痛くて働かない。
昨日は広瀬に飲み会に誘われた。その場に粋が山森梓を連れてきて……公開裁判をして、粋にマンションに連れて来られた。
疲れた時にたまになる頭痛とは異なる痛みが、頭の中を駆け巡る。
胃の辺りもムカつくし、最悪の気分だ。
「……おはよう」
目玉を動かすだけでも痛い。それでもなんとか動かすと、さっきは瞑っていた粋の瞼が開いていた。
「……おはよう……頭、痛い」
それだけ言うと、寿は目を瞑った。
「水持ってくるね、ちょっと待ってて」
ベッドから抜けた粋が、ごそごそと下着を穿いて部屋を出て行った。
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