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二人とも裸だ。つまりは、したのだろうか。全く覚えていない。
下半身に意識を集中した。
この間は入口も中もヒリヒリしたが、今はヒリヒリしないし、違和感もなかった。
体のどこにも、甘く痺れるような感覚はどこにも残っていない。布団の中の体を見た。左胸に赤い跡が一つあった。
ショーの時、他のモデルの胸に同じ跡があるのを見たことがあった。
そのモデルは、キスマークを付けるなんてプロ意識に欠けると、デザイナーに怒られていた。寿の胸にあるものは、それと同じだ。
てことは、したのだろうか。
粋の部屋のドアが開いた。起き上がった寿を見るなり、粋が慌ててドアを閉めた。
「ヤバいまずい。早く服着て」
粋はミネラルウォーターのペットボトルを寿に渡すと、下に落ちている寿の下着や服を集めた。
「着れる? 頭痛い?」
「頭痛い。着たくない、まだ寝たい」
ペットボトルの蓋を開けると、水を体に流し込んだ。
寿の下着を手に持って、パンツ一枚の粋は顔を顰めていた。
「何がヤバくてまずいの?」
「ソファに与井が寝てた」
すぐには理解できなかった。
頭痛の酷い脳で何度か復唱してみて、やっと意味を理解できた。
眠気も頭痛も吹き飛んだ。
粋の手から下着を奪うと、寿は急いで着替えた。
「何で与井先輩がいるの? 里中の家に行ったんじゃないの?」
「分かんねえ。でも、風呂から出た時にはいなかったのに。寝てる間に帰ってきたのか?」
風呂?
寿は自分の髪を掴むと匂いを嗅いだ。粋の家のシャンプーの匂いがした。
「私、お風呂入ったの?」
ジーンズのボタンをはめる粋の黒目が小さくなった。
「どうして私も粋も裸で寝てたの? これって、したってこと?」
粋に背中を向けてブラジャーを身に着けた。布団の中でショーツを穿いた。
「覚えてないの?」
「うん。この部屋に来たところとか全然思い出せない。なんか変なことしてないよね、私」
顔を赤くした粋の目が泳いだ。
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