初恋の人 (寿・現在)

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「……続きしようか?」  寿は思いきり粋の脇腹を殴った。 「するわけないでしょう、バカ粋、阿呆粋! それより、何、さっきの言い草は」  思いきり殴ったのに、悶えもしなければよろめきもしない。悔しかった。 「言い草って……俺、何か変なこと言った? あ、舐めてみるって風呂で言ったこと? それは、寿が握るから……」 「ちっげーよ、阿呆粋。初めてだったんだろうけどって言っただろ。初めてに決まってるじゃん! あんなもんを挿れられたのだって、先週が初めてだったんだよ」  本当に粋の表情は分かりやすい。小さくなった黒目が、言葉にしなくても、俺はどうしたらいいんだと言っていた。 「あのね、初めてに決まってるんだから、初めてだけど上手だったでいいんだよ」  寿は素肌の粋の肩に頬を寄せた。  何となく、昨夜自分がどういう風に思っていたか、思い出したような気がした。  粋が愛おしくて、切なくて、苦しかったのだろう。 「他には? 何か変なこと言ってなかった?」 「本当に全然覚えてないの?」  すぐ目の前に粋の唇があった。 「俺のことが大好きだって言ってた」 「粋は、なんて答えたの?」 「俺も大好きだよって言ったら、すごく喜んでた」  粋の唇が近付いてきた。目を閉じる前に、重なった。  ずいぶん、キスに慣れた。ちゃんと呼吸もできるし、粋がやるように時々粋の舌を吸ったりもできるようになった。
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