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「広瀬、トレーニング行くか?」
「ああ。お前はどうする?」
粋が寿を見た。口の端に岩海苔が付いている。こんなにたくさん載せて、大きい口で頬張るからだ。
「最終節が近いから、今日は休みだけどトレーニングだけ行きたいんだ。寿はどうする? ここで待ってる?」
「私は帰るよ」
口の端に岩海苔を付けた粋の眉が上がった。
「帰っちゃうの? 今夜は泊まらないの? 続き……」
反射的に、粋の額をはたいていた。
また黒目を小さくしている。この顔は、自分が口走った単語の恥ずかしさを理解していない証拠だ。
「口の端に岩海苔付けてるよ。そんな人のところに泊まりません」
広瀬が笑いを噛み殺していた。与井は呆れたように、粋にティッシュを渡した。
「お前、時々米粒も付いてるからな。気を付けろよな、もう大人なんだから。俺も帰るわ。午後から練習だ」
練習? 与井が大学卒業後にどこかのクラブに入ったと聞いていなかったし、ネットでも見かけなかった。
「そういえば、与井先輩ってお仕事してるんですか?」
「あれ? 御坂、芹沢に話してねえの? 俺はなんと、先生だ! しかも、葦沢高校で」
これには仰天した。
驚きはしたが、ぴったりだと思った。与井は、高校の時から後輩思いだった。きっと、与井だけに良い先生に違いない。
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