1793人が本棚に入れています
本棚に追加
/381ページ
「天職ですね」
「そうなんだよ! 一年の副担なんだけど、すげー可愛いぞ。あと、サッカー部のコーチもやってる」
与井ならば、厳しく温かく指導できているだろう。
「西尾監督はお元気ですか?」
「おう。元気だぞ。実はな、今年のチームも全国行くんだ」
全国。全国高等学校サッカー選手権大会だ。
ここにいる三人は、スタメン出場をして、強豪校を倒し、優勝を手にした。
「全国か。懐かしいな」
懐かしそうに広瀬が目を細めた。
「そうだ、一度訊きたいと思っていたんだ。芹沢、優勝旗を持ってみて、どうだった?」
「……重かったです。予選から戦ってきた相手チームの思い、スタンドの部員たちの思い、ベンチの部員の思い。ピッチで限界まで走った皆の思いが、優勝旗に込められていて。重くて、誇らしかったです」
寿の言葉に穏やかに微笑んだ。
「あの日の御坂は、めちゃくちゃ調子悪かった。泰成実業も鬼のように強かった。もし、芹沢がマネージャーになってなかったら、勝ててなかったかもなって、俺は思ってたよ」
「俺も思ってた! 皆、口には出さなかったけど、そう思ってたと思うぜ」
「何で?」
横で粋が首を傾げていた。
「何でじゃねえ! お前が前半、絶不調だったせいで俺らは苦しんだんだ。もう忘れたのか」
「駄目だな、阿呆の御坂には理解できないようだ。お、ちょうど山原が来たぞ。山原に解説してもらおうか」
話の途中で、インターフォンが鳴った。広瀬がオートロックを開けてしばらくして、山原がやってきた。
最初のコメントを投稿しよう!