初恋の人 (寿・現在)

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「天職ですね」 「そうなんだよ! 一年の副担なんだけど、すげー可愛いぞ。あと、サッカー部のコーチもやってる」  与井ならば、厳しく温かく指導できているだろう。 「西尾監督はお元気ですか?」 「おう。元気だぞ。実はな、今年のチームも全国行くんだ」  全国。全国高等学校サッカー選手権大会だ。  ここにいる三人は、スタメン出場をして、強豪校を倒し、優勝を手にした。 「全国か。懐かしいな」  懐かしそうに広瀬が目を細めた。 「そうだ、一度訊きたいと思っていたんだ。芹沢、優勝旗を持ってみて、どうだった?」 「……重かったです。予選から戦ってきた相手チームの思い、スタンドの部員たちの思い、ベンチの部員の思い。ピッチで限界まで走った皆の思いが、優勝旗に込められていて。重くて、誇らしかったです」  寿の言葉に穏やかに微笑んだ。 「あの日の御坂は、めちゃくちゃ調子悪かった。泰成実業も鬼のように強かった。もし、芹沢がマネージャーになってなかったら、勝ててなかったかもなって、俺は思ってたよ」 「俺も思ってた! 皆、口には出さなかったけど、そう思ってたと思うぜ」 「何で?」  横で粋が首を傾げていた。 「何でじゃねえ! お前が前半、絶不調だったせいで俺らは苦しんだんだ。もう忘れたのか」 「駄目だな、阿呆の御坂には理解できないようだ。お、ちょうど山原が来たぞ。山原に解説してもらおうか」  話の途中で、インターフォンが鳴った。広瀬がオートロックを開けてしばらくして、山原がやってきた。
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