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「どうしたの? 難しい顔してるぞ」
粋が隣に座った。寿の眉間に触れると、寄っていた皺を広げた。
粋の格好は、スウェットのトレーナーだけを着て、下はまたパンツ一枚だ。
「ううん、大丈夫。何で粋はズボン穿いてないの?」
「太ももまでしか入らなかった」
寿は、粋の太腿に触れた。
「固いね」
「うん、鍛えてるからね。メンズだと何とか入るんだけどね。これも無理すれば入りそうだったけど、この後、脱ぎにくそうだからやめた」
脱ぐ前提だと平然と話すことに、思わず吹き出した。意地悪したくなった。
「ねえ、粋。私ね、生理になっちゃったの」
粋の黒目がものすごく小さくなった。
「だから、今夜は何もできない。でも、大丈夫だよね? 私は粋と一緒にいれるから、キスだけでもとても幸せだよ」
本当に粋は嘘が吐けない。
ショートパンツから出る寿の足を見て、アイボリーのパーカーの胸元を見た。顔を上げた粋の表情は、顔中に残念と書いてあった。
「もちろん大丈夫。俺も、寿といれればいいから」
「……嘘吐き。大丈夫な顔じゃないよ」
粋の瞳が斜め上を見た。気まずそうに濡れた髪を掻き上げると、照れたように笑った。
「ごめん、私も嘘吐きだよ。意地悪したくなっちゃったの。生理はこの間終わったから、大丈夫だよ」
粋の瞼が何度も瞬かれた。眉根を寄せると、ムッとしたように唇を尖らせた。
「嘘は許さん。お仕置きだ」
いきなり抱き上げられて、慌てて首に腕を回した。
「寝室はどこ?」
「そこの扉を出てすぐ右」
目が合った。粋の顔が近付く。
さっきみたいなゆっくりと触れ合うキスではなくて、もっと性急なキスだった。
「寿は明日は休みだったよね。朝までお仕置きだからな」
また朝まで、何度も何度も求められるのだろうか。
考えただけで、お腹の奥が甘く疼いた。
「いいよ。負けないから」
また唇が重なった。リビングの照明を消して、粋がいた。ドアを開けた。
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