幸せな時間 寿・現在

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 すぐにベッドに寝かされた。深いキスをしながら、寿のパーカーのジッパーを下ろそうと四苦八苦している。  今までで一番押しが強い。意地悪を言ったから、怒っているのか。パジャマを壊されたら敵わないと思い、寿は粋の胸を叩いた。やっと唇が離れた。 「待って、粋。ジッパーが壊れちゃうから。自分で脱ぐよ」  起き上がった粋は、トレーナーとTシャツを一緒に脱いで裸になり、まだ脱いでいる途中の寿に覆い被さってきた。 「粋、寒くない? エアコン付ける? 布団に入る?」 「大丈夫、すぐに暑くなるから」  ジッパーを外したパーカーを脱がされた。  耳、首筋、鎖骨、肩に何度もキスをされた。粋の大きな手が、キャミソールの中に入って来て、胸に触れた。 「もしかして、寿はしたくない?」  突然粋が顔を上げた。粋にしては鋭い。  本当は、もっと話したかった。セックスではなくて、もっと触れ合いたかった。  粋の指先は乳房の周りを撫でている。 「したいけど、もうちょっと粋と話したい」  がっかりした顔をされるかもしれないと思った。でも、粋の顔色は少しも変わらなかった。  キャミソールから手を抜くと、粋がベッドの羽毛布団を捲って寝転がった。 「ここ、おいで」  腕枕をしてくれるみたいだ。  寿が横に寝転ぶと、布団を掛けて抱き締めてくれた。 「大丈夫、俺にだって理性はあるし。話をしよう。何を話す?」  一般的な男の性欲とか女の性欲とか、よく分からない。粋の性欲がどれほどの物なのかも分からない。  けれど、今、粋が寿のために我慢しているのは分かった。
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