幸せな時間 寿・現在

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 粋は寿の言いつけを守って、ちゃんと二回でやめた。  汗ばんだ体が、寿を抱き締めた。  余裕のない感じも、寿が気持ち良く感じているか確かめるように見る瞳も、果てる瞬間に顰める顔も、全部格好良くて大好きだ。  コンドームを外してティッシュで拭う粋の背中に、寿は寄り掛かった。 「ねえ、粋。コンドーム持って来てたの?」 「そうだよ。財布に入れといた。何で?」 「前から持ってるの?」  ちょっと気になっていた。  もし、常に持ち歩いているとしたら、それはそれで浮気の機会を窺っているようで嫌だった。 「ほら、初めて泊まった時になかったから買ってきたんだよ。寿のパンツとか買ってきたじゃん。でも、この間やり過ぎてあと三個しかないから、また買っとく」  何個入りのを買ったのだろう。一ダースだと十二個? 「飯食いに行こうか? 都会だし、美味いところありそうだよな」  開けたカーテンから日差しが射し込んでいた。日差しに透ける粋の髪は、少し茶色に見えた。 「まだお腹空かない」  抱きついた寿の頭を粋が撫でた。 「眠いの? もう少し寝る?」  自分で言っておきながら、ねだったら狡いなと思った。でも、抑えられない。寿は上目で見た。 「もっと触ってほしい」  寿の言葉に驚いた粋の目が小さくなった。 「二回したから、もう駄目なんだろ?」 「……まだあと三個あるって言ったじゃん」  人間は欲張りだ。  もっと愛されたいと思う。  寿は自分をバカだと思った。抱かれていると、すごく愛されている気分になる。これって、口先だけのセックスの上手い駄目男に嵌まるパターンだ。 「もう一回していいの?」  体は正直で、粋のものはずいぶんと大きく膨れていた。 「キスもして」  粋が寿に覆い被さった。  愛されるのは気持ちがいい。幸せだ。  粋の手の動きを感じながら、寿は目を閉じた。
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