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ヘアメイクを済ませてスタジオに行くと、すでにジェヒは着替えていた。スタジオの端に設置された衝立の向こうで、ブランドの担当者にフィッティングを手伝ってもらいカメラの前に立った。
「”美しいなあコトブキは”」
ジェヒが後ろから抱き締めてきた。
「”ちょっと、やめてよ”」
寿の抗議に構わずに、ジェヒは顔を寄せてきた。
「”もう撮影は始まってるよ”」
シャッター音が響き出した。そうだ、撮影のテーマは二人の休日だ。
スタジオの中には小洒落たリビングルームがセッティングされていた。ジェヒは寿の腰に腕を回し、そのままソファに倒れ込んだ。
「”乱暴にしないで、服に皺が寄る"」
「”でも、誰も止めない。何でか分かる? 俺と君が良い雰囲気だからだよ”」
その通りのようだ。シャッター音は止まないし、担当者からのストップもかからない。
スチール撮影は苦手だ。表情を作らなくてはいけない。ショーだってもちろん表情を作るが、スチール撮影は勝手が全違う。
初対面からベタベタとしてくる気に食わないジョヒ相手に、粋に見せるような顔をしなくてはいけない。
腹は立つが、ここはジョヒにリードしてもらったほうが撮影も順調にいくと寿は踏んだ。
何度か衣装を替えて、休憩を挟みながら撮影は進んでいった
やたら胸に当たる腕を躱しながら、撮影は予定よりも早く終わった。
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