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「”ねえ、この後食事でもどう?”」
撮影の雰囲気を引き摺るジョヒが肩を抱いてきた。
「”予定があるの。この手をどけてくれない?”」
「”ミサカとデート? 俺にも紹介してよ、サッカー観るの好きなんだよね。Jリーグも観てるよ”」
「”嫌よ。あと……撮影は終わったんだから、この手をどけろって言ってるんだよ、このセクハラ野郎!”」
セクハラって言葉を知っているのか分からないが、とりあえず手は離れた。スタッフが驚いたように見ているが関係ない。
どうして女ばかり体を触られても我慢しなくちゃいけないのか。
驚いたように一歩後退ったジョヒは、大きな口を開けて笑い出した。
「”いいね、コトブキ。また会おう。近いうちにね”」
手を高く振って、ジョヒは衝立の向こうに消えた。
「……高倉さん、服を部屋まで持ってきて。あっちで着替える」
なんだ、あの余裕の顔は。
人気があるのは分かる。歌も上手いしダンスも上手い。
でも、性格は最悪だ。遠慮がない。撮影とはいえ、服の上から何度も胸を触ってきたのは許せない。
「寿さん、服を置いておきますね。あと、ジョヒからLINEのIDを渡されたんですがどうしますか」
「即処分! 燃やしといてください」
「承知しました。エントランスで待っています。衣装は担当さんが取りに来るそうですからお渡しください」
この後、芙季に事務所に立ち寄るように言われていた。夜は、クラス会だ。山原も来るはずだ。
粋には面倒くさいなんて話したが、本当は楽しみだった。
着替えた衣装をブランド担当者に確認してもらい、寿は高倉の待つエントランスロビーに急いだ。
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