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そばにいたいのに 寿・現実
懐かしい面々の揃ったクラス会は楽しかった。
もともと、そんなにクラスには馴染んでいなかった。それでも、山原や数人の友達のお陰で三年間通い続けれたし、こうやってクラス会に出ることもできた。
「おい、ちょっと飲み過ぎじゃねえのか? この間、初めて酒飲んだんだろう?」
山原が心配そうな顔をして寿の前に水を置いた。
「大丈夫、最近、粋と毎晩晩酌してるの。少し強くなったよ」
「芹沢さん、御坂先輩と付き合ってるんだよね! もう五年でしょう長いよね」
「テレビ観たよ! 御坂先輩、結婚しますなんて格好良いよね」
「サッカー上手くて格好良くて、何か爽やかだし、芹沢さん幸せだね」
褒められて悪い気はしない。寿は目の前の何だか分からないカクテルを飲むと、緩みっぱなしの顔を押さえた。
今は三年分の幸せがまとめてやって来たぐらい幸せだ。
粋のことを思うだけで、ジョヒのセクハラによる打撃が薄れていく。芙季にも、もうジョヒには会いたくないと伝えたし、一緒に仕事をする機会はもうないだろう。
「毎晩晩酌って、一緒に住んでるの?」
「年末までの予定で、今だけ」
「来年には御坂先輩はレオネンに移籍するんだよな。本当は、夏の市場の時に移籍予定だったんだけど、ユナイテッドを優勝させるために時期を遅らせてもらったんだろ?」
名前が思い出せないが、一度同じ班になったことのある男が、山原の肩を叩いた。
「……らしいな。俺もよく知らんけど」
「ユナイテッドを本当に優勝させて、レオネンに行くんだもんな。格好良いよなあ」
移籍をする時期みたいなのがあるらしいが、寿はよく分からなかった。粋も、あまり移籍の話はしないし、寿から質問することもなかった。
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