そばにいたいのに 寿・現実

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 皆に粋を褒められて、どんどんと気分が上がっていった。  ふわふわする。 「芹沢、御坂先輩に迎えに来てもらうぞ。お前、もう歩けないだろう」  粋が来るらしい。嬉しかった。  山原によく分からないカクテルを取り上げられて、無理矢理水を飲まされた。  寿の話も粋の話も一周して、話題は皆の近況報告になった。  ここで、社会人としてお金を稼いでいるのは寿と山原だけだ。  皆が話す大学のサークルの話やゼミの話、アルバイトの話がとても煌びやかで華やかに聞こえた。 「芹沢、帰るぞ。悪い、こいつ酔っ払いすぎだから御坂先輩のとこまで送って、俺も帰るわ」  ほわほわと不安定な意識の向こうで山原の声が聞こえた。 「えー、山原くんも帰っちゃうの? 御坂先輩、ここまで来てくれないの?」 「ごめんね。あの人、道に迷ってここまで来れないみたいだから、改札で待つように伝えたんだ。次回は最後まで付き合うよ」  山原がコートを着せマフラーを巻いてくれた。  道に迷うなんて、粋らしい。本当に阿呆だ。 「これ、俺と芹沢のな。立て、芹沢。って、バカ! しっかり立て、お前が怪我したら俺が御坂に殺されるんだよ」  言われた通り立ったのに、ふらついた瞬間に怒られた。  ずっとふわふわしているし、眠くなってきた。
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